異文化コミュニケーション

今日は、私のプロフィールにも書いてあるフランスの音楽教育国家資格の事について、書いていきたいと思います。

というのも、ブログを始めようと思ったきっかけが、去年、この資格を取ろうと思った時に、あまりにも情報が少なくて、とても大変だったからなのです。この資格(D.Eといいます。)は、こちらで働かない限り、必要なものではないので、日本人で持っている人が少なく、一体どんな試験があるのが、どんな基準で審査されるのか、そういった情報が全く手に入らなかったのです。


このD.Eを簡単に説明すると2年間の教育課程の研修の後に(今年から3年間の研修制度)、国家試験のような形で試験を受け、合否が出ます。なぜ、音楽教育なのに、音楽院卒業だけでは不足なのかという事が、フランス人の人々すら思っているようですが、フランスの音楽院の80%以上が公立ですので、先生たちは、公務員扱いになります。そのためのふるいというか、判断基準を与える為に設けられたものと考えるのが一番シンプルかと思います。この資格社会は、音楽に限った事ではなく、薬剤師さんや、その他の資格が必要な職業の人々には、避けて通れない道のようです。

D.Eで教えられる枠は、初心者の子供達から音高生のレベル6歳~16、17歳子供達で、それ以上の学部課程、修士課程を教えるには、キャリアアップしてC.Aというまた別のディプロムを取らないといけません。これは、パリ高等音楽院で、同じく2年間の教育課程の研修を受けるか、もしくは、既に音楽院で4年~10年のキャリアがあると、最終試験のみ受ける事も可能です。

最近では、資格保有者でないと、応募すら出来ず、既に音楽院で教えているスーパーソリストでさえ、学長から資格を取るようにいわれ、渋々受け始めているという話もちらほら耳にします。

入試試験に一体どんな事が取り扱われているのかというと、
1, 30分のプログラムの実技試験
2, 実技試験直後に20分程度の面接
3, 楽譜ありの楽曲分析の試験1時間半
4, 楽譜なしの楽曲分析の試験1時間半
5, 音楽学、もしくは音楽教育についての小論文2時間

というのが、どこの研修機関でもスタンダードのようです。
研修期間は各県、もしくは各地方に1つずつあります。)

何よりも難しかったのが、面接です。
志望動議はもとより、自身の演奏を元に、指導方法について説明させられたり、日本人としてアイデンティティをどう感じるか、日本とフランスの違い、全体的に観察力、判断力、そして論評する力を試されます。フランスの社会において、Critiquer(批判、論評)は、どこへいっても求められますが、ここまでつつかれた事は始めただったように思います。ですので、試験の一ヶ月程前から、こういった試験に詳しい先生にお願いして、自分の足りない点、避けた方が好ましい回答など対策を練って頂いたり、自分で話したい事を何度も書き出して暗記したりして、対策を練りました。

その次にかなり時間を割いたのが、楽曲分析でした。
まず、2年連続合格出来なかったパリの養成機関では、2年連続宗教音楽が課題。二年目は、配られた楽譜を見た瞬間に、これは落ちる・・と確信さえしました。ラテン語も読めなければ、キリスト教を学問でしか見た事がなかったので、楽譜があると言えど、音源があると言えど、あまりの理解のし難さに意識が何度もとびそうになりました。そういっても、こういうジャンルになれているフランス人達は、1時間半、ずっとカリカリ必死に書いて、6枚も7枚も分析結果を提出していました。文化の違いを目の当たりにして、お先真っ暗になったのは、間違いなしです。

そして、その次に書いてある、楽譜なしの楽曲分析というのは、五線紙、白い紙だけを渡されて、3~5分程度の抜粋音源を聴かされて、それについてひたすら分析します。知られていないシンフォニーの3楽章、スケルツォやロンドが多かったように思います。日本では、楽譜なしの分析という授業は全く受けた事がなかったので、観点を変えて勉強し直さなければなりませんでした。友人たちに聞いても、皆、過去問を片っ端から聞いて、アナリーゼをしたという人が多数いました。

アナリーゼの試験で、どこよりも変わっていたのが、北の方の学校で、アナリーゼは一課題のみ。音源は3つ+音楽学の記事付き。というものでした。これは、東洋音楽と西洋音楽の交わりについて書かれた記事で、これを読み、音減を聴きアナリーゼするようにという、いまだかつてないような課題。その上、音源は、ビートルズとジャズでした・・・アナリーゼをするために、ビートルズを聴音したのは、これが最初で最後でしょう。この発音はブリティッシュイングリッシュで云々、このコード進行は、60年代のものと思われ云々・・と根拠がありそうでないような事をつらつらと書いた記憶があります。

こうった試行錯誤をして2年目にして入学したのが、ディジョンにあるCEFEDEMでした。今年から、PESMと名前を変え、D.E+学士号がとれるようになったようです。私のように大学を出てからこちらに来てる人々は、既に学士号を持っていますが、こちらの音楽院を出ただけでは、大学扱いではないので、今年からほぼどこのCEFEDEMも大学の音楽学とセクションと教育課程が連携して、3年間の研修というように変化したそうです。2年間でもこんなに大変なのに、3年間なんて、今年からの新入生が可哀想でなりません・・・。

次回は授業内容についてお話したいと思います。

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