リクルート

7月はフランスの新学期そしてリクルート期間だったので、毎週1~2回面接にお呼ばれして、嬉しいような体が常に縮こまったような、緊張気味の一ヶ月を過ごしていました。音楽院のリクルートは、書類審査の後、基本的に学長もしくは県の人事部や文化担当、前任の先生も立ち会いの元、面接のみで採用が決められるので、(内心みんな楽器吹かせてよと思ってるに決まってる!)どうやって自分をアピールするかと言う事に知恵を絞るものの、「今回250通以上応募があったんですよ」なんて伝えられるものだから、緊張で何度か魚みたいな顔で受け答えした気もします…。


学校によって学長以外の同席者が違うため、自己紹介の後は質問の種類も様々で、政治的な質問、奏法について音楽的なもの、家庭に問題がある生徒への対処など発達心理学的なものだったり。かと思いきや、際どいプライベートな質問もあって、もし私がフランス人男性だったなら、ここまで突っ込まれないんだろうなぁ…なんて思う場面もありました。それもこれも、いい勉強をさせて頂きました!

なので、今年も代講エキスパートとして、六ヶ月程郊外の音楽院で教える事になりました。週14時間、小学生から20歳まで年齢層も様々だそうで、3eme cycle(音高レベル位)の学生はフォーレのファンタジーやエネスコを試験で吹かなくてはいけないというので、とっても楽しみです。

ちなみにこの時期、資格の事で時々質問をされるので、以前の記事と少しかぶってしまいますが、こちらに書いておきますね。

音楽院の教授や学長の資格を取るには(子供~大学レベル)CA(Certificat d'Aptitude)というパリ音楽院の教育課程(マスター課程)、内部生はリヨン音楽院でも履修可。

音楽院のアシスタントの資格を取るには(子供~音高レベル)DE (Diplome d'Etat )こちらは各地方に学校があります。(全13校)

フランスの小中学校で音楽の教諭をされたい方は、DUMI(Diplome Universitare de Musiciens Intervenant) という国家資格。各地方のCFMIで取得可。

と3タイプに別れています。これはクラシック音楽に限らず、ミュージックアクチュエルと呼ばれるジャズ科も、そしてダンス(バレエ、モダンジャズなど)も開設されています。DUMIについては、私は詳しくないのですが、DEとCAについては、2~3年の研修の後、卒業試験合格するとまず文化庁から国家資格が与えられます。

この状態で音楽院に勤務する事も可能なのですが(ただし昇給などのシステムが義務化されていないポストvacataire英語でいうTemporaryになる)、その後Fonctionnement Publiqueという公務員採用試験通過して、Titulaireになる事が必要とされます。しかし、この試験を通過したら2年以内にポストを取得しないと無効になるらしい。。。

難しいのは、前任の先生が教授でCAのTitulaireだとすると、後任の先生も同じくCAでTitulaireが必要とされ、もしも学長が気に入った人材を見つけてその人がDEしか持っていないと、県議、もしくは市議に願書を提出して了解を得ないといけないのだそう。そして、もし同じディプロムを持っていて、Titulaireでない場合は、okが出なかったり、公務員試験受けてくださいねーと毎年押されるそうです。そりゃそうだ。

ちなみにこの公務員採用試験を受けるには、フランス国籍が必要なので…。二重国籍を持てない日本人は、ディプロムを取るまでで終了。(なので帰化については、毎回突っ込んで質問されます。)ちなみにEU圏内の国籍は有効化される(された?)との事。

実際の状況としては、音楽院にはまだ教育課程ディプロムを持ってない先生方もいて、市や県の方から研修所に行ってディプロムを取得するか(費用は音楽院が持ってくれるそうです!)、VAE(Varidation des Aquis de l'Experience)という常勤で5年以上(?)働いた先生方が受けられる研修なしの認定試験を受けるように促される事が多いようです。

これもセクションによって大分違って、ピアノ、ヴァイオリン、フルートの様に人口が多い楽器は、CAでもDEでもTitulaireが当たり前のような所があって、元々人口が少ない楽器は、DEだけでも十分だったり。その辺はまだ統一化までいってないのも現実。ただ仕事をしながら研修に行くのも大変だろうし、教鞭を取って10年20年にもなるのに、今更試験だなんてなかなか難しいですよね。

ディブロム取得というのは、確かに一定のレベルに達しているという証明にはなるのかもしれないけれど、それだけで音楽の質が、教えるスキルが上なわけでもなく、国の方針をふまえた教育法に乗っ取って勉強したかどうかというのがポイントなのですよね、きっと。それがコンセルヴァトワール Conservatoire(音楽院)の語源でもあるConserver 保全という意味→文化の保護に繋がるのかなと思います。

私自身はDEを取っている間、フランスの教育現場を見れてとても興味深かったし、今もTitulaireになれない代わりに、第三者的にこのシステムを見る事が出来る気もします。そうすると、なんかとんでもなく、大きな渦の前に居るような気にもなる。うむ。なので今年も適度に流されてやっていきましょう。

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