具体的な副科ピアノの話

実は、フランスには副科ピアノ、副科声楽といった、副科科目が存在せず、履修したい人は、本科の初級クラスから入る。というシステムになっています。なので、ヴァイオリニストだけど、オーボエもプリ(学位)持っていたり、ベーシストだけど、クラリネットのプリを持っていたりと、二つ、三つ学位を持っている人は少なくありません。

ですが、さすが教育課程、生徒のレッスンを伴奏出来た方がいいだろうと、CEFEDEMには副科ピアノのレッスンがあります。それもなかなかクラス分けが面白く、ピアニストは基本的にジャズ即興のクラス、フルーティストは通奏低音クラス等、理にかなったクラス分けがされているわけです。

私は必然的に通奏低音のクラス。一年目は、バロック時代に使われていた通奏低音のメトードを使い、二年目の今年は、J,S,バッハの知られていないコラールを即興するという課題。本当だったら、先生も、さくっと進みたい所だと思うのですが、何せ通奏低音=数字和声なわけでして・・・それを即興するには、あと数年かかりそうです。

私の副科ピアノの先生の意見では、日本の和声課題で使うような、ローマ数字と展開系などを組み合わせた表記は、読むのに時間がかかり、即興に適さないし、音の響きが書かれていない。という理由で、これは頭で使う分析の記号であって音楽ではないとのお言葉を頂きました。仰りたい事はよーーく分かるのですが、数字和声+ハ音記号のメロディーを読みつつ、和声を考えるのは、なかなか至難な業です。

このピアノのJ先生。アナリーゼの先生でもあり、チェンバリストでもあり、高等音楽院の伴奏クラスの先生でもあります。歩く図書館。変な和音を弾き、きれいじゃなーい!とパニックになる私に対して、「綺麗」という表現は、各自の好みによるものなので、具体性がない。何が間違ってるか、どうなっているか、ちゃんと具体的に説明して。と、毎回朝からスマッシュをかましてくれます。これはバロックの人に多い気がしますが、取り上げる例がとても具体的、且つ理論的。

例えば、彼は毛皮が苦手なのですが、私のファーの帽子を見て、気持ち悪いとか、嫌いとかコメントするのではなく、『君、今日は頭に獣がのってるよ。。。』と一言。思わず、『うん、動くんだよ。かぶる?』と打ち返しておきましたが。何かにつき、具体的に物事を見ているのです。

この先生のお陰で、楽曲分析をする時も、どんな要素が、どんな響きを作っているのか?という事を的確に定められるようになりました。何度レポートを提出しても、君のレポートは、ただ曲を要約してあるだけで、どういう原因でどういった結果、反映をもたらしているか、もっと具体的に書くように。という事をこの一年半ずっと言われ続けていました。かといって、ここは海のうねりのように、と書けば、僕にはそう思えません。とさらっと返され。もっと具体的に、客観的に。一度楽器で演奏しだすと、客観的な判断にしづらくなる事は誰しもあると思いますが、やはり第三者の目をキープする事はとても大切ですよね。

もしかしたらフランス人の話が長いのは、この具体的に何でも最初から最後まで話す所為なのかもしれません。

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